ケガについて 〜その1 後編〜
ヒザの痛み 後編
やばいなぁ、治ってないじゃん。
痛かったものが、そう簡単に治るわけはないのだ。治ってほしいという期待が大きいから、良くなりかけると、もう問題はほぼ解決したと思い込みたいだけなのだ。
野球では長い間ピッチャーとして投げてきた。だから、肩が痛くてもキャッチボールから始めて、肩が温まるに従って、痛みが和らいで来るのは良く知っている。もちろん投げ終えた後、肩の痛みはより悪化する。それを繰り返すと、遂に全力で投げることができなくなる。おれは30代の前半でそうなった。肩関節の痛みのせいで、腕を思い切り振ることができない。自分の中にまだ十分に残されている力を、球に伝えることができない。
それ以来、この痛みさえなけりゃなぁ、と歯がゆい思いを抱えながら、だましだまし今までもたせて来た。
何かえらいシリアスなモードで書いてしまっている。いやそんな深刻に野球をしてきたわけじゃない。そもそもおれが入っているのは、勝ちたいのは山々だが、それぞれの能力の中で精一杯のプレーをして楽しくやれればそれが一番、という姿勢で30年近く続いてきたチームだ。エースだのジジイだの持ち上げられたり落とされたりしながら、楽しくやってんですよ、実際のところ。
それはともかく、同じことを、足で繰り返してはいけない。肩が痛くてもよっぽどじゃない限り野球はできるが、走れなくなったらランナーとしてアウトだからなぁ。
冷やすべきなのか、温めるべきなのか、動かさないほうがいいのか、ストレッチくらいはした方がいいのか。皆目わからないので、色々試してみるが、何をしてもすぐに感じられる変化はない。椅子に腰掛けて、膝が固定された状態でじっとしていると、立ち上がるときに固着しかけたような痛みを感じる。歩き出してしばらくすると、ほぐれるからか、痛みはほとんど気にならないレベルになる。だから少しは動かしたほうがいいような気もするが、なるべく動かさない方がいい、というのも理にかなっている気がする。
何しろ日常生活には全く支障がないので、医者に行っても、ランニングによる筋肉や腱の疲労からくる炎症という診断が下され、安静を勧められ、ストレッチ&湿布、というあたりの常識的な指示があるくらいのものだろう。そしておそらくそれが正解なのだ。
しかし、本当にこの痛みが治まるのをじっと待ち、ヒザへの負荷の軽いジョギングや筋トレを再開し、痛まない体を少しずつ作り上げるのが、唯一の方法なのか?
Y夫師匠は、“壊しては治し、治しては鍛えて行くんですよ”と言った。でもそれはもう少し若い者のセオリーだという気がする。
今は、壊す前に休み、十分に休んだら少しずつ鍛える、というあたりがリスクのない、最も妥当な方法なのだろう。
いや、でもなぁ、走りたいんだよなぁ。
ただなぁ、それで潰しちゃあ、本当に元も子もないんだよなぁ。
キリのない堂々巡りの自問自答なのであった。