走ることについて 〜思い返せば その1〜
万年2位
体を動かすことは人並み以上に好きで、鉄棒や跳び箱やマット運動などの器械体操系では誰にも負けなかった。小学3年の時の担任は、体育の授業が終わると、全員に靴箱までのウサギ跳びを命じるという、今では考えられないことをやらせていたのだが、おれはいつもダントツの1位だった。
何しろ当時既に力こぶが盛り上がり、腹筋も割れていたし、ヒラメ筋は力を入れるとエッジが立ってガチッと固くなった。走り始めてほぼ1年たって腹筋や体幹もそこそこ鍛えているのにまだできるようにならない脚前挙だって、小学1年の頃からなんの苦労もなくできた。
なのに足は全然速くなかった。
小学校3年の時、体育の授業で初めて測った50m走のタイムは9秒8。
ほぼ男子の平均レベルだ。クラスで一番だったのは、ひそかに大好きだったれいこちゃんで、8秒8。おれより1秒も早かった。
運動会の徒競走では、授業で測ったタイムが近い者同士が走ることになっていた。
なのでどの組も接戦になる。それでもなぜかいつも本当にいっつも2等で、あのゴールテープというやつを自分で切ったことがない。思うように回転してくれない自分の足の重さが本当にもどかしかった。
一方4歳下の弟は、兄とは全く質の違う筋肉を持って生まれてきた。
幼稚園の頃からかけっこはいつもブッチギリ。小学校6年までリレーでは常にアンカー、というどうにも羨ましい運動会のヒーローなのだった。